英国指輪雑記・05年9月6日
ああ、気がついたらもう9月・・・(汗)。この夏は本当に忙しくて、せっかく新しいPCを買ったのに更新する時間と余裕が全然ありませんでした。気がついたらトールキン関連の各種イベントも終了しているし・・・。毎年恒例のOxonmootはこれからですが。
そしていつの間にか(いや、ずっと気にはしていたのですけどね)、「Lord of the Rings Sketchbook 」がすでに発売されていたので、さっそく入手しました。ほんっとうに素敵な本で、指輪物語とアラン・リーのイラストが好きな人は必読(or必見)の書だと思います!1992年に出版された、トールキン生誕100周年記念版LOTRの挿絵の下絵(ラフスケッチ含)や、映画版LOTRのコンセプトアートの基盤となったデッサンやスケッチが満載で、ページをめくりながらニヤニヤが止まりません〜。どうやらこの本は、先月の各種イベント会場ではすでに出回っていたようで、ゲスト参加したアラン・リー本人によるサイン会もあったようです。参加できた人がうらやましい〜!
ところで、昨年5月27日の雑記と6月4日の雑記に書いた、150万ポンド(約3億円)で売りに出されたというオックスフォードのノースムーア通り20番地の家のことなのですが、ちょっと調べてみたら、昨年8月末に提示価格を10万ポンド(約2000万円)も上回る、160万ポンド(約3億2000万円)で購入されたそうです。ひえ〜!庶民にはとても手が出ません〜(汗)。それにしても、提示価格をこれだけ大幅に上回るというのは、かなり珍しいことだと思います。
なぜそう思うかを書く前に、イギリスの住宅事情を簡単に説明したいと思います。ちょっと長くなりますが、おつきあい下さい。
日本とイギリスの住宅事情の大きく異なる点の一つは、日本では一旦家を買ったら、転勤などのやむを得ない事情がない限り、基本的に一生その家に住み続けますが、イギリスでは気軽に引越しをする人が多いという点です。イギリスでは、同じ町内やエリア内で新しい家を買って引っ越す、という人も多いです。
木材はブレイク滝
また、大きく異なるもう一つの点は、イギリスでは、おそらく中古物件が大多数だという点でしょう。そのせいか、イギリスで「中古物件」に相当する英語を聞いたことがないような気がします。もちろんイギリスでも、日本のように新築物件の分譲販売や建て売りもありますが、いわゆる中古住宅に手を加え修繕しつつ(例えば電気の配線を新しくしたり、二重窓にしたり、建て増ししたり)、住みやすい状態に保ち続ける、ということがごく一般的に行われています。地震も台風も来ませんから、こうしたことが可能なのでしょう。ノースムーア通りのこの家は1924年築だそうですから、もう80年以上経っています。
中には19世紀以前に建てられた家などもありますが、逆にそういう家は歴史的価値があるということで人気もあるし、一概に値段も高いです。例えば「ヴィクトリア王朝時代当時の暖炉」なんてものがそのまま残っていたら、それだけで骨董品ですよね。また、使われなくなった教会や、何百年も前に建てられたような石造りの厩(うまや)などを買い取って、お金と時間をかけてきれいで立派な家に改造する人もいるし、中には「これでもか!」というほど壮絶な状態のボロ屋を安く買い取り、なるべく少ない予算と短い時間できれいに直し、家としての価値を上げてから売りに出し、その売り上げ金でまた別の壮絶なボロ屋を安く買い・・・という過程を繰り返すことによって収入を得る人もいます。
次は、不動産の売買について、私が知っている範囲でなるべく簡潔に書きます。
イングランドとウェールズでは、一般的に自分の持ち家を売りに出す場合、不動産屋による見積もり価格やその地域の住宅価格の相場などを参考にしながら、「このくらいの値段で売れたらいいなあ」という希望価格を決め、売りに出します。不動産屋の窓に広告が張り出されたり、最近ではインターネットで簡単に売り出し中の物件の検索が出来るようになっています。
メノモニーフォールズウィスコンシンシニアマンション
一方、買う家を探す人は、その広告のうたい文句や写真や立地条件などが気に入ったら、不動産屋を通じて実際にその物件を見に行く予約を入れます。そして、実際に見て気に入った場合、買いたいという意思表示をします。その価格が妥当だと思うなら、「その金額で買いたいです」とオファーを出しますが、たいていの場合、少しでも安く買えれば嬉しいということで、物は試しで売り手の希望価格を若干下回る金額をオファーします。あくまでも売り手の「希望する価格」ですから、それを下回る額をオファーしたところで何の問題もありません(あまりにも低すぎると、売り手が侮辱されたと気分を害するかもしれませんが、その家の状態にもよります)。売り手がその金額で満足なら同意し、その金額では低すぎてとても売れ� ��いと思ったら断ります。
スコットランドでは事情が少々異なり、売り手が「これよりも高いオファーを受けます」という最低金額を提示し、買いたい人はそれを上回る金額をオファーしなくてはいけないそうです。なので人気のある物件の場合、オークションのように値段がつり上がっていく可能性もあるわけです。
こうした値段の交渉などは、不動産屋を通して行われるのが一般的です。最近では売り手がネットで自分で広告を出して、買い手との金額交渉を自分で行う人も増えているようで、広告を出すスペースを有料(不動産屋に払う手数料〔成功報酬〕よりもずっと安い)で提供するサイトもあります。また、オークション会場で売買が行われることもあります。
2年ほど前までは、イギリスは不動産バブルで、家の値段が急騰していました。しかし、昨年あたりから値上がり方が非常に緩やかになり、今年に入ってからは、良くても横ばい状態か、逆にロンドンやイングランド南東部を中心に、じりじりと値下がりしているという状態です(ウェールズやイングランド北西部などではまだ上がり続けているそうです)。おそらく値段が上がりきってしまい、「買いたくても高すぎて買えない!」という人が増えてきてしまったためでしょう。これだけが理由ではないかもしれませんが、親元にいつまでも住み続ける、イギリスの若者のパラサイト・シングル化も進んでいます(イギリスでは学校を卒業するか、社会に出ると同時に親元を離れるのが通例)。
積立銀行リーズバーグ·パイクは、教会VAを下回る
売り手とすれば、価格が上がり切ったような印象を受ける今が売り時と思えるかもしれませんが、買い手とすれば、特に初めて家を買う人の場合、「今買ってしまったら、万一価格が大幅に値下がった時は大損かも・・・」と、慎重にならざるを得ません。そんなわけか、最近は供給が需要を大幅に上回っている印象を受けます。自分の家を売って別の家を買う場合、その人は売り手でもあり買い手でもあるわけなので、初めて買う人に比べたらリスクは少ないかもしれませんが。
最近では、売りに出してから半年以上たっても買い手が見つからない、というようなこともザラで、そういう家の持ち主は希望価格を下げるか、買い手が見つかるのをただひたすら待つか、売るのをあきらめて作戦変更(?)するしかありません。家そのものが魅力的であるとか(田舎風のコッテージや、歴史と様式美を感じる家など)、人気のあるエリア(通勤が便利、評判の良い学校がすぐそばにある、治安が良い等)でもない限り、相当努力しないと、希望に近い値段で売れないかもしれません。売りに出す前に、少しでも売れやすくなるように、じゅうたんを取り替えたり、部屋の色をニュートラルな無難な色に塗り替えたり、不要な家具などを貸し倉庫に預けて家の中を広く見せ、モデルハウスのようにとはいかないまでも、� ��きる限りきれいにして見栄えを良くしてから売りに出す人もいます。そうまでしないと売れないわけです。
不動産バブルの時は、極端に言えば、ただ住んでいるだけで家の価値が上がって、売りに出せば、その家を買うために自分が払った金額の2倍、3倍という値段で売れました。「今家を買えば価値が上がる」と多くの人が家を買い求めたため、需要が供給を上回り、それが住宅価格の急騰につながったのかもしれません。他にもイギリス経済の動向や、住宅ローンの利子の変動など要素はいろいろあると思いますが、難しくて私にはよく分かりません(汗)。いずれにしても、少なくとも2、3年ほど前までは売り手市場でした。しかし、そのような時代はもはや過去のものとなってしまいました。もちろん、将来またどうなるか分かりませんが。
現在は、上に述べたような理由で完全な買い手市場ですから、売り手の希望価格をかなり下回る価格で買い取られることが一般的のようです。私の住んでいる地域は、比較的治安も良くそこそこ人気のある地域なのですが(単に田舎とも言う)、それでも最近は、平均で希望価格を約7パーセント下回る価格で売買されることが多いそうです。
なので、1年前とは言え、希望価格を約6.7パーセントも上回る値段で買い取られたノースムーア通り20番地は、本当にすごいと思います。オックスフォードという人気のあるエリアのためでもあるとは思いますが、さすがトールキン教授がかつて住んでいた家ですね。もしかしたらオークションのように競り合いになっていた可能性も十分あると思います。
普通の家の場合ですが、例えば売り手が「すぐに売りさばいてしまいたい」というような場合、わざと控えめな価格で売りに出すことがあります。建物の状態や立地条件などに致命的な欠点でもない限り、リーズナブルな価格ゆえ複数の買い手の興味(と競争心)をそそり、オークション状態になってしまい、結果として希望価格以上の価格で買い取られる、ということがあります。それでも、この家のように、6.7パーセントも上回るのは非常に珍しいような気がします。
ノースムーア通りのこの家は、昨年11月に政府によって保護対象の建築物(listed building)に指定されました(BBCによるレポート)。そのため、今後は外観はもちろんのこと、家の内部にも手を加えることに厳しい規制が設けられることになります。Department for Culture, Media and Sport (イギリス政府の文化・メディア・スポーツ省)によると、イングランドには、現在約50万ものこうした保護対象の建築物があるそうです。ファンとしても、当時の面影がいつまでも保護されるというのは本当に嬉しいです。しかし、3億2千万円ですか・・・。はあ〜(遠い目)。
0 コメント:
コメントを投稿