IBM 「金融機関よ、賢く進化し、そして飛翔せよ!」 - Japan
蓑輪:少子高齢化、産業構造の転換など、環境が変わる中で、新しいビジネスの芽が出てくるということがあります。金融界を取り巻く大きなトレンドをどのように捉えてらっしゃいますか?
安田:まずリテール金融で言いますと、この先5年間は「団塊の世代」がキーワードになります。退職金マーケットは90兆円とも言われ、その上に、親の資産30兆円を相続する世代でもあります。退職金プラス相続という大きなマーケットを郵貯が参入してくる前につかみ、顧客基盤として囲い込んでおくことが、5年後の勝敗を決します。商品は昔ながらの金融サービスだけではなく、医療分野と融合したサービスや運用サービスなどが求められるでしょう。「シルバー世代、イコール年金」という考え方ではなく、シルバーを的確にセグメントしながら、顧客ニーズに合わせた商品やサービスを提供する必要があります。
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リテールの二つ目のキーワードは「e」。ネット証券は増えていますが、ネット銀行はまだこれからです。これまで銀行にとって小口預金、小口ローンは経費がかかり収益性が低いとされてきましたが、「実店舗も人員も不要、ネットだけでOK」となると採算が取れるのです。いわゆる金融市場におけるロングテール戦略が実現性を持ちます。ただし、「e」の時代で競合するプレイヤーの中で、必ずしも銀行が顧客に選択されるとは限りません。小売業や通信業など他業態もあなどれません。人が何かを利用したり、物を購入したりする行為と金融機能が結び付けられるとき、銀行界は今の体制だけでは対応できないのです。
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一方、法人金融に関するキーワードは、「再編」と「事業リスク・テーキング」。銀行は与信リスクを背負います。証券会社はそれをせずに仲介料をとります。ところが、今後は、与信リスクを利ざやで賄うだけでは企業金融収益は薄くなり、また、仲介による引受手数料だけで食べていけるということもありません。そのため、一定の事業リスクをとり、それに見合ったリターンを確保するビジネスが必要です。それがプライベート・エクイティ・ファンド的なマーチャント・バンキングが期待される理由です。融資だけではなく、それ以上に自己資金を投資し、自ら事業リスクをとって収益の獲得を目指すというやり方。そうなると事業リスクを管理� ��きる金融機関と、できない金融機関の収益格差が拡がっていくでしょう。企業再編や合従連衡が盛んになる今がそのチャンスです。
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蓑輪:従来、金融業は厳しい規制下にあり、他業種に比べてその規制に守られていました。しかし、これだけ競争が激しくなると、顧客側が金融機関を選択するようになります。安田さんがおっしゃったトレンドに共通しているのは、従来の金融の枠にとらわれるべきではないということ。金融機関は顧客の行動の中に自ら入り込んでいかないと、なかなか利用してもらえないという状況になってきます。リテールで見ると、顧客との接点をもち、トラフィックが多ければ多いほど、サービスを提供できる機会が多くなるのだと思います。
安田:確かにリテール顧客との接点は、流通や小売より銀行は弱いです。ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)は、自身を「流通サービス業」と定義。英国の大手スーパーマーケット・チェーンのテスコと共同でテスコ銀行を設立し、ブランドを捨ててまで流通業との提携を深めています。そこまでする理由は、リテール・バンキングにおいては顧客アクセスと囲い込みが大事だからです。銀行に顧客がくるのはせいぜい「月」2~3回。コンビニやスーパーマーケットに来るのは「週」に2~3回。それほどアクセス量が違います。さらに、アクセスした顧客に複数の金融商品をクロスセルして取引深耕により収益を確実にすることも大事です。そうした顧客接点は銀行店舗だけでなく、小売の店舗・不動産会社の窓口・病院の 窓口でもあるのです。
蓑輪:リテールでは特にマーケティング能力が重要になると思いますが、銀行は他業態と比べると圧倒的に顧客情報をもっているのに、当の銀行の方ではあまり意識されていないように感じます。
安田:マーケティングのキーは、顧客をどれだけ知っているかということにあります。その意味では、確かに銀行には多くの情報が眠っています。しかし、それをマーケティングに生かしているかというとまだ開発の余地があります。銀行は、年齢、住所、家族構成、取引情報など、静態的な属性情報を持ってマーケティングに生かそうとしています。その情報もひとつの価値を生みますが、クレジットカードの利用方法や窓口での対面販売で聞き出した情報など動態的顧客情報の方が、もっとマーケティングに価値を持たせます。後者としてのカスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)がかなり普及しましたが、CRMによるマーケティングは適切なデータ分析だけでなく、データを基にマーケティング策を立案させる仮説� ��成力、そして、窓口で顧客に対話しながら頭を使って販売する力が伴わなければ効果は限られます。情報の分析だけではうまくいかないのです。データ収集能力があり、行員に仮説立案志向が染み付いており、マーケティング上昇ネットワークが張り巡らされており、現場でハイタッチな顧客接触ができる銀行が勝つのではないでしょうか。
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